透明 編隊 人間 夜ふかし。 fxbookingengine.idsnext.com: 絶倫!透明変態人é

韓国で慰安婦「批判」禁止法案が物議「尹美香保護法だ」と非難が続出

☏むかし 達谷 ( たつた )の 悪路王 ( あくろわう ) まつくらくらの二里の 洞 ( ほら ) わたるは夢と 黒夜神 ( こくやじん ) 首は刻まれ漬けられ アンドロメダもかゞりにゆすれ 青い 仮面 ( めん )このこけおどし 太刀を浴びてはいつぷかぷ 夜風の底の 蜘蛛 ( くも )をどり 胃袋はいてぎつたぎた dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah さらにただしく 刃 ( やいば )を 合 ( あ )はせ 霹靂 ( へきれき )の青火をくだし 四方 ( しはう )の 夜 ( よる )の 鬼神 ( きじん )をまねき 樹液 ( じゆえき )もふるふこの 夜 ( よ )さひとよ 赤ひたたれを地にひるがへし 雹雲 ( ひよううん )と風とをまつれ dah-dah-dah-dahh 夜風 ( よかぜ )とどろきひのきはみだれ 月は 射 ( い )そそぐ銀の矢並 打つも 果 ( は )てるも火花のいのち 太刀の 軋 ( きし )りの消えぬひま dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah 太刀は 稲妻萱穂 ( いなづまかやぼ )のさやぎ 獅子の 星座 ( せいざ )に散る火の雨の 消えてあとない 天 ( あま )のがはら 打つも果てるもひとつのいのち dah-dah-dah-dah-dah-sko-dah-dah 月は水銀 後夜 ( ごや )の 喪主 ( もしゆ ) 火山 礫 ( れき )は 夜 ( よる )の 沈澱 ( ちんでん ) 火口の 巨 ( おほ )きなゑぐりを見ては たれもみんな愕くはずだ (風としづけさ) いま 漂着 ( へうちやく )する薬師 外輪山 ( ぐわいりんざん ) 頂上の石標もある (月光は水銀 月光は水銀) こんなことはじつにまれです 向ふの黒い山……つて それですか それはここのつづきです ここのつづきの外輪山です あすこのてつぺんが絶頂です 向ふの? 向ふのは御室火口です これから外輪山をめぐるのですけれども いまはまだなんにも見えませんから もすこし明るくなつてからにしませう えゝ 太陽が出なくても あかるくなつて 西岩手火山のはうの火口湖やなにか 見えるやうにさへなればいいんです お日さまはあすこらへんで拝みます 黒い絶頂の右肩と そのときのまつ赤な太陽 わたくしは見てゐる あんまり真赤な幻想の太陽だ いまなん時です 三時四十分? ちやうど一時間 いや四十分ありますから 寒いひとは提灯でも持つて この岩のかげに居てください ああ 暗い雲の海だ 向ふの黒いのはたしかに早池峰です 線になつて浮きあがつてるのは北上山地です うしろ? あれですか あれは雲です 柔らかさうですね 雲が駒ヶ岳に被さつたのです 水蒸気を含んだ風が 駒ヶ岳にぶつつかつて 上にあがり あんなに雲になつたのです 鳥海山 ( てうかいさん )は見えないやうです けれども 夜が明けたら見えるかもしれませんよ (柔かな雲の波だ あんな大きなうねりなら 月光会社の五千噸の汽船も 動揺を感じはしないだらう その質は 蛋白石 glass-wool あるいは水酸化礬土の沈澱) じつさいこんなことは稀なのです わたくしはもう十何べんも来てゐますが こんなにしづかで そして暖かなことはなかつたのです 麓の谷の底よりも さつきの九合の小屋よりも 却つて暖かなくらゐです 今夜のやうなしづかな晩は つめたい空気は下へ沈んで 霜さへ降らせ 暖い空気は 上に浮んで来るのです これが気温の逆転です 御室火口の 盛 ( も )りあがりは 月のあかりに照らされてゐるのか それともおれたちの提灯のあかりか 提灯だといふのは勿体ない ひはいろで暗い それではもう四十分ばかり 寄り合つて待つておいでなさい さうさう 北はこつちです 北斗七星は いま山の下の方に落ちてゐますが 北斗星はあれです それは小熊座といふ あの七つの中なのです それから向ふに 縦に三つならんだ星が見えませう 下には斜めに房が下つたやうになり 右と左とには 赤と青と大きな星がありませう あれはオリオンです オライオンです あの房の下のあたりに 星雲があるといふのです いま見えません その下のは大犬のアルフア 冬の晩いちばん光つて 目立 ( めだ )つやつです 夏の蝎とうら表です さあみなさん ご勝手におあるきなさい 向ふの白いのですか 雪ぢやありません けれども行つてごらんなさい まだ一時間もありますから 私もスケツチをとります はてな わたくしの帳面の 書いた分がたつた三枚になつてゐる 事によると月光のいたづらだ 藤原が提灯を見せてゐる ああ頁が折れ込んだのだ さあでは私はひとり行かう 外輪山の自然な美しい歩道の上を 月の半分は 赤銅 ( しやくどう ) 地球照 ( アースシヤイン ) お月さまには黒い処もある 後 藤 ( どう )又兵衛いつつも拝んだづなす 私のひとりごとの反響に 小田島 治衛 ( はるゑ )が云つてゐる 山中鹿之助だらう もうかまはない 歩いていゝ どつちにしてもそれは 善 ( い )いことだ 二十五日の月のあかりに照らされて 薬師火口の外輪山をあるくとき わたくしは地球の華族である 蛋白石の雲は遥にたゝへ オリオン 金牛 もろもろの星座 澄み切り澄みわたつて 瞬きさへもすくなく わたくしの額の上にかがやき さうだ オリオンの右肩から ほんたうに鋼青の壮麗が ふるへて私にやつて来る 三つの提灯は夢の火口原の 白いとこまで降りてゐる 雪ですか 雪ぢやないでせう 困つたやうに返事してゐるのは 雪でなく 仙人草のくさむらなのだ さうでなければ 高陵土 ( カオリンゲル ) 残りの一つの提灯は 一升のところに停つてゐる それはきつと河村慶助が 外套の袖にぼんやり手を引つ込めてゐる 御室 ( おむろ )の方の火口へでもお入りなさい 噴火口へでも入つてごらんなさい 硫黄のつぶは拾へないでせうが 斯んなによく声がとゞくのは メガホーンもしかけてあるのだ しばらく躊躇してゐるやうだ 先生 中さ 入 ( はひ )つてもいがべすか えゝ おはひりなさい 大丈夫です 提灯が三つ沈んでしまふ そのでこぼこのまつ黒の線 すこしのかなしさ けれどもこれはいつたいなんといふいゝことだ 大きな帽子をかぶり ちぎれた繻子のマントを着て 薬師火口の外輪山の しづかな月明を行くといふのは この石標は 下向の道と書いてあるにさうゐない 火口のなかから提灯が出て来た 宮沢の声もきこえる 雲の海のはてはだんだん平らになる それは一つの 雲平線 ( うんぴやうせん )をつくるのだ 雲平線をつくるのだといふのは 月のひかりのひだりから みぎへすばやく擦過した 一つの夜の幻覚だ いま火口原の中に 一点しろく 光 ( ひか )るもの わたくしを呼んでゐる呼んでゐるのか 私は気圏オペラの役者です 鉛筆のさやは光り 速かに指の黒い影はうごき 唇を円くして立つてゐる私は たしかに気圏オペラの役者です また月光と火山塊のかげ 向ふの黒い巨きな壁は 熔岩か集塊岩 力強い肩だ とにかく夜があけてお鉢廻りのときは あすこからこつちへ出て来るのだ なまぬるい風だ これが気温の逆転だ (つかれてゐるな わたしはやつぱり睡いのだ) 火山弾には黒い影 その 妙好 ( めうかう )の火口丘には 幾条かの軌道のあと 鳥の声! 鳥の声! 海抜六千八百尺の 月明をかける鳥の声 鳥はいよいよしつかりとなき 私はゆつくりと踏み 月はいま二つに見える やつぱり疲れからの乱視なのだ かすかに光る火山塊の一つの面 オリオンは 幻怪 ( げんくわい ) 月のまはりは熟した瑪瑙と葡萄 あくびと月光の 動転 ( どうてん ) (あんまりはねあるぐなぢやい 汝 ( うな )ひとりだらいがべあ 子供等 ( わらしやど )も連れでて目にあへば 汝 ( うな )ひとりであすまないんだぢやい) 火口丘 ( くわこうきう )の上には天の川の小さな爆発 みんなのデカンシヨの声も聞える 月のその銀の角のはじが 潰れてすこし円くなる 天の海とオーパルの雲 あたたかい空気は ふつと 撚 ( より )になつて飛ばされて来る きつと屈折率も低く 濃い 蔗糖溶液 ( しよたうようえき )に また水を加へたやうなのだらう 東は淀み 提灯 ( ちやうちん )はもとの火口の上に立つ また口笛を吹いてゐる わたくしも戻る わたくしの影を見たのか提灯も戻る (その影は鉄いろの背景の ひとりの修羅に見える筈だ) さう考へたのは間違ひらしい とにかくあくびと影ぼふし 空のあの辺の星は微かな散点 すなはち空の模様がちがつてゐる そして今度は月が 蹇 ( ちぢ )まる なぜ吠えるのだ 二疋とも 吠えてこつちへかけてくる (夜明けのひのきは心象のそら) 頭を下げることは犬の 常套 ( じやうたう )だ 尾をふることはこはくない それだのに なぜさう本気に吠えるのだ その 薄明 ( はくめい )の二疋の犬 一ぴきは灰色錫 一ぴきの尾は茶の草穂 うしろへまはつてうなつてゐる わたくしの歩きかたは不正でない それは犬の中の狼のキメラがこはいのと もひとつはさしつかへないため 犬は薄明に溶解する うなりの尖端にはエレキもある いつもあるくのになぜ吠えるのだ ちやんと顔を見せてやれ ちやんと顔を見せてやれと 誰かとならんであるきながら 犬が吠えたときに云ひたい 帽子があんまり大きくて おまけに下を向いてあるいてきたので 吠え出したのだ 城のすすきの波の上には 伊太利亜製の空間がある そこで烏の群が踊る 白雲母 ( しろうんも )のくもの幾きれ (濠と 橄欖天鵞絨 ( かんらんびろうど ) 杉) ぐみの木かそんなにひかつてゆするもの 七つの銀のすすきの穂 (お城の下の桐畑でも ゆれてゐるゆれてゐる 桐が) 赤い 蓼 ( たで )の花もうごく すゞめ すゞめ ゆつくり杉に飛んで稲にはひる そこはどての陰で気流もないので そんなにゆつくり飛べるのだ (なんだか風と悲しさのために胸がつまる) ひとの名前をなんべんも 風のなかで繰り返してさしつかへないか (もうみんな鍬や縄をもち 崖をおりてきていゝころだ) いまは鳥のないしづかなそらに またからすが横からはひる 屋根は矩形で傾斜白くひかり こどもがふたりかけて行く 羽織をかざしてかける日本の子供ら こんどは茶いろの雀どもの抛物線 金属製の桑のこつちを もひとりこどもがゆつくり行く 蘆の穂は赤い赤い (ロシヤだよ チエホフだよ) はこやなぎ しつかりゆれろゆれろ (ロシヤだよ ロシヤだよ) 烏がもいちど飛びあがる 稀硫酸の中の亜鉛屑は烏のむれ お城の上のそらはこんどは支那のそら 烏三疋杉をすべり 四疋になつて旋転する 樺の向ふで日はけむる つめたい露でレールはすべる 靴革の料理のためにレールはすべる 朝のレールを栗鼠は横切る 横切るとしてたちどまる 尾は der Herbst 日はまつしろにけむりだし 栗鼠は走りだす 水そばの 苹果緑 ( アツプルグリン )と 石竹 ( ピンク ) たれか三角やまの草を刈つた ずゐぶんうまくきれいに刈つた 緑いろのサラアブレツド 日は白金をくすぼらし 一れつ黒い杉の槍 その 早池峰 ( はやちね )と薬師岳との 雲環 ( うんくわん )は 古い壁画のきららから 再生してきて浮きだしたのだ 色鉛筆がほしいつて ステツドラアのみじかいペンか ステツドラアのならいいんだが 来月にしてもらひたいな まああの山と上の雲との模様を見ろ よく熟してゐてうまいから けふのうちに とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ ( *あめゆじゆとてちてけんじや) うすあかくいつそう 陰惨 ( いんざん )な雲から みぞれはびちよびちよふつてくる (あめゆじゆとてちてけんじや) 青い 蓴菜 ( じゆんさい )のもやうのついた これらふたつのかけた 陶椀 ( たうわん )に おまへがたべるあめゆきをとらうとして わたくしはまがつたてつぱうだまのやうに このくらいみぞれのなかに飛びだした (あめゆじゆとてちてけんじや) 蒼鉛 ( さうえん )いろの暗い雲から みぞれはびちよびちよ沈んでくる ああとし子 死ぬといふいまごろになつて わたくしをいつしやうあかるくするために こんなさつぱりした雪のひとわんを おまへはわたくしにたのんだのだ ありがたうわたくしのけなげないもうとよ わたくしもまつすぐにすすんでいくから (あめゆじゆとてちてけんじや) はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから おまへはわたくしにたのんだのだ 銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの そらからおちた雪のさいごのひとわんを…… ……ふたきれのみかげせきざいに みぞれはさびしくたまつてゐる わたくしはそのうへにあぶなくたち 雪と水とのまつしろな 二相系 ( にさうけい )をたもち すきとほるつめたい雫にみちた このつややかな松のえだから わたくしのやさしいいもうとの さいごのたべものをもらつていかう わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ みなれたちやわんのこの藍のもやうにも もうけふおまへはわかれてしまふ ( *Ora Orade Shitori egumo) ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ あああのとざされた病室の くらいびやうぶやかやのなかに やさしくあをじろく燃えてゐる わたくしのけなげないもうとよ この雪はどこをえらばうにも あんまりどこもまつしろなのだ あんなおそろしいみだれたそらから このうつくしい雪がきたのだ ( *うまれでくるたて こんどはこたにわりやのごとばかりで くるしまなあよにうまれてくる) おまへがたべるこのふたわんのゆきに わたくしはいまこころからいのる どうかこれが天上のアイスクリームになつて おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ さつきのみぞれをとつてきた あのきれいな松のえだだよ おお おまへはまるでとびつくやうに そのみどりの葉にあつい頬をあてる そんな植物性の青い針のなかに はげしく頬を刺させることは むさぼるやうにさへすることは どんなにわたくしたちをおどろかすことか そんなにまでもおまへは林へ行きたかつたのだ おまへがあんなにねつに燃され あせやいたみでもだえてゐるとき わたくしは日のてるとこでたのしくはたらいたり ほかのひとのことをかんがへながら森をあるいてゐた *ああいい さつぱりした まるで林のながさ来たよだ 鳥のやうに 栗鼠 ( りす )のやうに おまへは林をしたつてゐた どんなにわたくしがうらやましかつたらう ああけふのうちにとほくへさらうとするいもうとよ ほんたうにおまへはひとりでいかうとするか わたくしにいつしよに行けとたのんでくれ 泣いてわたくしにさう言つてくれ おまへの頬の けれども なんといふけふのうつくしさよ わたくしは緑のかやのうへにも この新鮮な松のえだをおかう いまに雫もおちるだらうし そら さはやかな terpentine ( ターペンテイン )の匂もするだらう こんなにみんなにみまもられながら おまへはまだここでくるしまなければならないか ああ巨きな信のちからからことさらにはなれ また純粋やちひさな徳性のかずをうしなひ わたくしが青ぐらい修羅をあるいてゐるとき おまへはじぶんにさだめられたみちを ひとりさびしく往かうとするか 信仰を一つにするたつたひとりのみちづれのわたくしが あかるくつめたい 精進 ( しやうじん )のみちからかなしくつかれてゐて 毒草や蛍光菌のくらい野原をただよふとき おまへはひとりどこへ行かうとするのだ ( *おら おかないふうしてらべ) 何といふあきらめたやうな悲痛なわらひやうをしながら またわたくしのどんなちひさな表情も けつして見遁さないやうにしながら おまへはけなげに母に 訊 ( き )くのだ (うんにや ずゐぶん立派だぢやい けふはほんとに立派だぢやい) ほんたうにさうだ 髪だつていつそうくろいし まるでこどもの苹果の頬だ どうかきれいな頬をして あたらしく天にうまれてくれ *それでもからだくさえがべ? うんにや いつかう ほんたうにそんなことはない かへつてここはなつののはらの ちひさな白い花の匂でいつぱいだから ただわたくしはそれをいま言へないのだ (わたくしは修羅をあるいてゐるのだから) わたくしのかなしさうな眼をしてゐるのは わたくしのふたつのこころをみつめてゐるためだ ああそんなに かなしく眼をそらしてはいけない (かしはのなかには鳥の巣がない あんまりがさがさ鳴るためだ) ここは艸があんまり 粗 ( あら )く とほいそらから空気をすひ おもひきり倒れるにてきしない そこに水いろによこたはり 一列生徒らがやすんでゐる (かげはよると亜鉛とから合成される) それをうしろに わたくしはこの草にからだを投げる 月はいましだいに銀のアトムをうしなひ かしははせなかをくろくかがめる 柳沢 ( やなぎさは )の杉はコロイドよりもなつかしく ばうずの 沼森 ( ぬまもり )のむかふには 騎兵聯隊の灯も澱んでゐる ああおらはあど死んでもい おらも死んでもい (それはしよんぼりたつてゐる宮沢か さうでなければ小田島国友 向ふの柏木立のうしろの闇が きらきらつといま顫へたのは Egmont Overture にちがひない たれがそんなことを云つたかは わたくしはむしろかんがへないでいい) 伝さん しやつつ何枚 三枚着たの せいの高くひとのいい佐藤伝四郎は 月光の反照のにぶいたそがれのなかに しやつのぼたんをはめながら きつと口をまげてわらつてゐる 降つてくるものはよるの微塵や風のかけら よこに鉛の針になつてながれるものは月光のにぶ ほお おら…… 言ひかけてなぜ堀田はやめるのか おしまひの声もさびしく反響してゐるし さういふことはいへばいい (言はないなら手帳へ書くのだ) とし子とし子 野原へ来れば また風の中に立てば きつとおまへをおもひだす おまへはその巨きな木星のうへに居るのか 鋼青壮麗のそらのむかふ (ああけれどもそのどこかも知れない空間で 光の紐やオーケストラがほんたうにあるのか ………… 此処 ( こご )あ 日 ( ひ )あ 永 ( な )あがくて 一日 ( いちにぢ )のうちの 何時 ( いづ )だがもわがらないで…… ただひときれのおまへからの通信が いつか汽車のなかでわたくしにとどいただけだ) とし子 わたくしは高く呼んでみようか 手 凍 ( かげ )えだ 手凍えだ? 俊夫ゆぐ凍えるな こなひだもボダンおれさ掛げらせだぢやい 俊夫といふのはどつちだらう 川村だらうか あの青ざめた喜劇の天才「植物医師」の一役者 わたくしははね起きなければならない おゝ 俊夫てどつちの俊夫 川村 やつぱりさうだ 月光は柏のむれをうきたたせ かしははいちめんさらさらと鳴る みんなサラーブレツドだ あゝいふ馬 誰行つても押へるにいがべが よつぽどなれたひとでないと 古風なくらかけやまのした おきなぐさの冠毛がそよぎ 鮮かな青い樺の木のしたに 何匹かあつまる茶いろの馬 じつにすてきに光つてゐる (日本絵巻のそらの群青や 天末の turquois ( タコイス ) はめづらしくないが あんな大きな心相の 光の 環 ( くわん )は風景の中にすくない) 二疋の大きな白い鳥が 鋭くかなしく啼きかはしながら しめつた朝の日光を飛んでゐる それはわたくしのいもうとだ 死んだわたくしのいもうとだ 兄が来たのであんなにかなしく啼いてゐる (それは一応はまちがひだけれども まつたくまちがひとは言はれない) あんなにかなしく啼きながら 朝のひかりをとんでゐる (あさの日光ではなくて 熟してつかれたひるすぎらしい) けれどもそれも夜どほしあるいてきたための vague ( バーグ ) な銀の錯覚なので (ちやんと今朝あのひしげて融けた 金 ( キン )の液体が 青い夢の北上山地からのぼつたのをわたくしは見た) どうしてそれらの鳥は二羽 そんなにかなしくきこえるか それはじぶんにすくふちからをうしなつたとき わたくしのいもうとをもうしなつた そのかなしみによるのだが (ゆふべは柏ばやしの月あかりのなか けさはすずらんの花のむらがりのなかで なんべんわたくしはその名を呼び またたれともわからない声が 人のない野原のはてからこたへてきて わたくしを嘲笑したことか) そのかなしみによるのだが またほんたうにあの声もかなしいのだ いま鳥は二羽 かゞやいて白くひるがへり むかふの湿地 青い蘆のなかに降りる 降りようとしてまたのぼる (日本武尊の新らしい御陵の前に おきさきたちがうちふして嘆き そこからたまたま千鳥が飛べば それを尊のみたまとおもひ 蘆に足をも傷つけながら 海べをしたつて行かれたのだ) 清原がわらつて立つてゐる (日に灼けて光つてゐるほんたうの農村のこども その菩薩ふうのあたまの 容 ( かたち )はガンダーラから来た) 水が光る きれいな銀の水だ さああすこに水があるよ 口をすゝいでさつぱりして往かう こんなきれいな野はらだから こんなやみよののはらのなかをゆくときは 客車のまどはみんな水族館の窓になる (乾いたでんしんばしらの列が せはしく遷つてゐるらしい きしやは銀河系の 玲瓏 ( れいろう )レンズ 巨きな水素のりんごのなかをかけてゐる) りんごのなかをはしつてゐる けれどもここはいつたいどこの停車 場 ( ば )だ 枕木を焼いてこさへた柵が立ち (八月の よるのしじまの 寒天凝膠 ( アガアゼル )) 支手のあるいちれつの柱は なつかしい陰影だけでできてゐる 黄いろなラムプがふたつ 点 ( つ )き せいたかくあをじろい駅長の 真鍮棒もみえなければ じつは駅長のかげもないのだ (その大学の昆虫学の助手は こんな車室いつぱいの液体のなかで 油のない赤 髪 ( け )をもじやもじやして かばんにもたれて睡つてゐる) わたくしの汽車は北へ走つてゐるはずなのに ここではみなみへかけてゐる 焼杭の柵はあちこち倒れ はるかに黄いろの地平線 それはビーアの 澱 ( おり )をよどませ あやしいよるの 陽炎と さびしい心意の明滅にまぎれ 水いろ川の水いろ駅 (おそろしいあの水いろの空虚なのだ) 汽車の逆行は 希求 ( ききう )の同時な相反性 こんなさびしい幻想から わたくしははやく浮びあがらなければならない そこらは青い孔雀のはねでいつぱい 真鍮の睡さうな脂肪酸にみち 車室の五つの電燈は いよいよつめたく液化され (考へださなければならないことを わたくしはいたみやつかれから なるべくおもひださうとしない) 今日のひるすぎなら けはしく光る雲のしたで まつたくおれたちはあの重い赤いポムプを ばかのやうに引つぱつたりついたりした おれはその黄いろな服を着た隊長だ だから睡いのはしかたない ( おゝおまへ ( オー ヅウ ) せはしいみちづれよ ( アイリーガー ゲゼルレ ) どうかここから急いで去 らないでくれ ( アイレドツホ ニヒト フオン デヤ ステルレ ) 尋常一年生 ドイツの尋常一年生 いきなりそんな悪い叫びを 投げつけるのはいつたいたれだ けれども尋常一年生だ 夜中を過ぎたいまごろに こんなにぱつちり眼をあくのは ドイツの尋常一年生だ) あいつはこんなさびしい停車場を たつたひとりで通つていつたらうか どこへ行くともわからないその方向を どの種類の世界へはひるともしれないそのみちを たつたひとりでさびしくあるいて行つたらうか (草や沼やです 一本の木もです) ギルちやんまつさをになつてすわつてゐたよ こおんなにして眼は大きくあいてたけど ぼくたちのことはまるでみえないやうだつたよ ナーガラがね 眼をじつとこんなに赤くして だんだん 環 ( わ )をちひさくしたよ こんなに し 環をお切り そら 手を出して ギルちやん青くてすきとほるやうだつたよ 鳥がね たくさんたねまきのときのやうに ばあつと空を通つたの でもギルちやんだまつてゐたよ お日さまあんまり変に飴いろだつたわねえ ギルちやんちつともぼくたちのことみないんだもの ぼくほんたうにつらかつた さつきおもだかのとこであんまりはしやいでたねえ どうしてギルちやんぼくたちのことみなかつたらう 忘れたらうかあんなにいつしよにあそんだのに かんがへださなければならないことは どうしてもかんがへださなければならない とし子はみんなが死ぬとなづける そのやりかたを通つて行き それからさきどこへ行つたかわからない それはおれたちの空間の方向ではかられない 感ぜられない方向を感じようとするときは たれだつてみんなぐるぐるする 耳ごうど鳴つてさつぱり聞けなぐなつたんちやい さう甘えるやうに言つてから たしかにあいつはじぶんのまはりの 眼にははつきりみえてゐる なつかしいひとたちの声をきかなかつた にはかに呼吸がとまり脈がうたなくなり それからわたくしがはしつて行つたとき あのきれいな眼が なにかを索めるやうに空しくうごいてゐた それはもうわたくしたちの空間を二度と見なかつた それからあとであいつはなにを感じたらう それはまだおれたちの世界の幻視をみ おれたちのせかいの幻聴をきいたらう わたくしがその耳もとで 遠いところから声をとつてきて そらや愛やりんごや風 すべての勢力のたのしい根源 万象同帰のそのいみじい生物の名を ちからいつぱいちからいつぱい叫んだとき あいつは二へんうなづくやうに息をした 白い尖つたあごや頬がゆすれて ちひさいときよくおどけたときにしたやうな あんな偶然な顔つきにみえた けれどもたしかにうなづいた ヘツケル博士! わたくしがそのありがたい証明の 任にあたつてもよろしうございます 仮睡硅酸 ( かすゐけいさん )の雲のなかから 凍らすやうなあんな卑怯な叫び声は…… (宗谷海峡を越える晩は わたくしは夜どほし甲板に立ち あたまは具へなく陰湿の霧をかぶり からだはけがれたねがひにみたし そしてわたくしはほんたうに挑戦しよう) たしかにあのときはうなづいたのだ そしてあんなにつぎのあさまで 胸がほとつてゐたくらゐだから わたくしたちが死んだといつて泣いたあと とし子はまだまだこの世かいのからだを感じ ねつやいたみをはなれたほのかなねむりのなかで ここでみるやうなゆめをみてゐたかもしれない そしてわたくしはそれらのしづかな夢幻が つぎのせかいへつゞくため 明るいいゝ匂のするものだつたことを どんなにねがふかわからない ほんたうにその夢の中のひとくさりは かん護とかなしみとにつかれて睡つてゐた おしげ子たちのあけがたのなかに ぼんやりとしてはひつてきた 黄いろな花こ おらもとるべがな たしかにとし子はあのあけがたは まだこの世かいのゆめのなかにゐて 落葉の風につみかさねられた 野はらをひとりあるきながら ほかのひとのことのやうにつぶやいてゐたのだ そしてそのままさびしい林のなかの いつぴきの鳥になつただらうか I'estudiantina を風にききながら 水のながれる暗いはやしのなかを かなしくうたつて飛んで行つたらうか やがてはそこに小さなプロペラのやうに 音をたてて飛んできたあたらしいともだちと 無心のとりのうたをうたひながら たよりなくさまよつて行つたらうか わたくしはどうしてもさう思はない なぜ通信が許されないのか 許されてゐる そして私のうけとつた通信は 母が夏のかん病のよるにゆめみたとおなじだ どうしてわたくしはさうなのをさうと思はないのだらう それらひとのせかいのゆめはうすれ あかつきの薔薇いろをそらにかんじ あたらしくさはやかな感官をかんじ 日光のなかのけむりのやうな 羅 ( うすもの )をかんじ かがやいてほのかにわらひながら はなやかな雲やつめたいにほひのあひだを 交錯するひかりの棒を過ぎり われらが上方とよぶその不可思議な方角へ それがそのやうであることにおどろきながら 大循環の風よりもさはやかにのぼつて行つた わたくしはその跡をさへたづねることができる そこに碧い寂かな湖水の面をのぞみ あまりにもそのたひらかさとかがやきと 未知な全反射の方法と さめざめとひかりゆすれる樹の列を ただしくうつすことをあやしみ やがてはそれがおのづから研かれた 天の瑠璃の地面と知つてこゝろわななき 紐になつてながれるそらの楽音 また瓔珞やあやしいうすものをつけ 移らずしかもしづかにゆききする 巨きなすあしの生物たち 遠いほのかな記憶のなかの花のかをり それらのなかにしづかに立つたらうか それともおれたちの声を聴かないのち 暗紅色の深くもわるいがらん洞と 意識ある蛋白質の砕けるときにあげる声 亜硫酸や 笑気 ( せうき )のにほひ これらをそこに見るならば あいつはその中にまつ青になつて立ち 立つてゐるともよろめいてゐるともわからず 頬に手をあててゆめそのもののやうに立ち (わたくしがいまごろこんなものを感ずることが いつたいほんたうのことだらうか わたくしといふものがこんなものをみることが いつたいありうることだらうか そしてほんたうにみてゐるのだ)と 斯ういつてひとりなげくかもしれない…… わたくしのこんなさびしい考は みんなよるのためにできるのだ 夜があけて海岸へかかるなら そして波がきらきら光るなら なにもかもみんないいかもしれない けれどもとし子の死んだことならば いまわたくしがそれを夢でないと考へて あたらしくぎくつとしなければならないほどの あんまりひどいげんじつなのだ 感ずることのあまり新鮮にすぎるとき それをがいねん化することは きちがひにならないための 生物体の一つの自衛作用だけれども いつでもまもつてばかりゐてはいけない ほんたうにあいつはここの感官をうしなつたのち あらたにどんなからだを得 どんな感官をかんじただらう なんべんこれをかんがへたことか むかしからの多数の実験から 倶舎がさつきのやうに云ふのだ 二度とこれをくり返してはいけない おもては 軟玉 ( なんぎよく )と銀のモナド 半月の噴いた瓦斯でいつぱいだ 巻積雲 ( けんせきうん )のはらわたまで 月のあかりはしみわたり それはあやしい 蛍光板 ( けいくわうばん )になつて いよいよあやしい苹果の匂を発散し なめらかにつめたい窓硝子さへ越えてくる 青森だからといふのではなく 大てい月がこんなやうな暁ちかく 巻積雲にはひるとき…… おいおい あの顔いろは少し青かつたよ だまつてゐろ おれのいもうとの死顔が まつ青だらうが黒からうが きさまにどう斯う云はれるか あいつはどこへ堕ちようと もう無上道に属してゐる 力にみちてそこを進むものは どの空間にでも勇んでとびこんで行くのだ ぢきもう東の鋼もひかる ほんたうにけふの……きのふのひるまなら おれたちはあの重い赤いポムプを…… もひとつきかせてあげよう ね じつさいね あのときの眼は白かつたよ すぐ瞑りかねてゐたよ まだいつてゐるのか もうぢきよるはあけるのに すべてあるがごとくにあり かゞやくごとくにかがやくもの おまへの武器やあらゆるものは おまへにくらくおそろしく まことはたのしくあかるいのだ みんなむかしからのきやうだいなのだから けつしてひとりをいのつてはいけない ああ わたくしはけつしてさうしませんでした あいつがなくなつてからあとのよるひる わたくしはただの一どたりと あいつだけがいいとこに行けばいいと さういのりはしなかつたとおもひます 海面は朝の炭酸のためにすつかり銹びた 緑青 ( ろくしやう )のとこもあれば 藍銅鉱 ( アズライト )のとこもある むかふの波のちゞれたあたりはずゐぶんひどい 瑠璃液 ( るりえき )だ チモシイの穂がこんなにみじかくなつて かはるがはるかぜにふかれてゐる (それは青いいろのピアノの鍵で かはるがはる風に押されてゐる) あるいはみじかい変種だらう しづくのなかに朝顔が咲いてゐる モーニンググローリのそのグローリ いまさつきの曠原風の荷馬車がくる 年老つた白い重挽馬は首を垂れ またこの男のひとのよさは わたくしがさつきあのがらんとした町かどで 浜のいちばん賑やかなとこはどこですかときいた時 そつちだらう 向ふには行つたことがないからと さう云つたことでもよくわかる いまわたくしを親切なよこ目でみて (その小さなレンズには たしか樺太の白い雲もうつつてゐる) 朝顔よりはむしろ 牡丹 ( ピオネア )のやうにみえる おほきなはまばらの花だ まつ赤な朝のはまなすの花です ああこれらのするどい花のにほひは もうどうしても 妖精のしわざだ 無数の藍いろの蝶をもたらし またちひさな黄金の槍の穂 軟玉の花瓶や青い簾 それにあんまり雲がひかるので たのしく激しいめまぐるしさ 馬のひづめの痕が二つづつ ぬれて寂まつた褐砂の上についてゐる もちろん馬だけ行つたのではない 広い荷馬車のわだちは こんなに淡いひとつづり 波の来たあとの白い細い線に 小さな蚊が三疋さまよひ またほのぼのと吹きとばされ 貝殻のいぢらしくも白いかけら 萱草の青い花軸が半分砂に埋もれ 波はよせるし砂を巻くし 白い片岩類の小砂利に倒れ 波できれいにみがかれた ひときれの貝殻を口に含み わたくしはしばらくねむらうとおもふ なぜならさつきあの熟した黒い実のついた まつ青なこけももの上等の 敷物 ( カーペツト )と おほきな赤いはまばらの花と 不思議な 釣鐘草 ( ブリーベル )とのなかで サガレンの朝の妖精にやつた 透明なわたくしのエネルギーを いまこれらの濤のおとや しめつたにほひのいい風や 雲のひかりから恢復しなければならないから それにだいいちいまわたくしの心象は つかれのためにすつかり青ざめて 眩ゆい緑金にさへなつてゐるのだ 日射しや幾重の暗いそらからは あやしい鑵鼓の蕩音さへする わびしい草穂やひかりのもや 緑青 ( ろくしやう )は水平線までうららかに延び 雲の累帯構造のつぎ目から 一きれのぞく天の青 強くもわたくしの胸は刺されてゐる それらの二つの青いいろは どちらもとし子のもつてゐた特性だ わたくしが樺太のひとのない海岸を ひとり歩いたり疲れて睡つたりしてゐるとき とし子はあの青いところのはてにゐて なにをしてゐるのかわからない とゞ松やえぞ松の荒さんだ幹や枝が ごちやごちや漂ひ置かれたその向ふで 波はなんべんも巻いてゐる その巻くために砂が湧き 潮水はさびしく濁つてゐる (十一時十五分 その蒼じろく光る 盤面 ( ダイアル )) 鳥は雲のこつちを上下する ここから今朝舟が滑つて行つたのだ 砂に刻まれたその船底の痕と 巨きな横の台木のくぼみ それはひとつの曲つた十字架だ 幾本かの小さな木片で HELL と書きそれを LOVE となほし ひとつの十字架をたてることは よくたれでもがやる技術なので とし子がそれをならべたとき わたくしはつめたくわらつた (貝がひときれ砂にうづもれ 白いそのふちばかり出てゐる) やうやく乾いたばかりのこまかな砂が この十字架の刻みのなかをながれ いまはもうどんどん流れてゐる 海がこんなに青いのに わたくしがまだとし子のことを考へてゐると なぜおまへはそんなにひとりばかりの妹を 悼んでゐるかと遠いひとびとの表情が言ひ またわたくしのなかでいふ (Casual observer! ) 空があんまり光ればかへつてがらんと暗くみえ いまするどい羽をした三羽の鳥が飛んでくる あんなにかなしく啼きだした なにかしらせをもつてきたのか わたくしの片つ方のあたまは痛く 遠くなつた栄浜の屋根はひらめき 鳥はただ一羽硝子笛を吹いて 玉髄の雲に漂つていく 町やはとばのきららかさ その背のなだらかな丘陵の鴾いろは いちめんのやなぎらんの花だ 爽やかな 苹果青 ( りんごせい )の草地と 黒緑とどまつの列 (ナモサダルマプフンダリカサスートラ) 五匹のちひさないそしぎが 海の巻いてくるときは よちよちとはせて遁げ (ナモサダルマプフンダリカサスートラ) 浪がたひらにひくときは 砂の鏡のうへを よちよちとはせてでる やなぎらんやあかつめくさの群落 松脂岩薄片のけむりがただよひ 鈴谷山脈は光霧か雲かわからない (灼かれた馴鹿の黒い頭骨は 線路のよこの赤砂利に ごく敬虔に置かれてゐる) そつと見てごらんなさい やなぎが青くしげつてふるへてゐます きつとポラリスやなぎですよ おお満艦飾のこのえぞにふの花 月光いろのかんざしは すなほなコロボツクルのです (ナモサダルマプフンダリカサスートラ) Van't Hoff の雲の白髪の崇高さ 崖にならぶものは 聖白樺 ( セントベチユラアルバ ) 青びかり野はらをよぎる細流 それはツンドラを截り (光るのは電しんばしらの碍子) 夕陽にすかし出されると その緑金の草の葉に ごく精巧ないちいちの葉脈 (樺の微動のうつくしさ) 黒い木柵も設けられて やなぎらんの光の点綴 (こゝいらの樺の木は 焼けた野原から生えたので みんな大乗風の考をもつてゐる) にせものの大乗居士どもをみんな灼け 太陽もすこし青ざめて 山脈の縮れた白い雲の上にかかり 列車の窓の稜のひととこが プリズムになつて日光を反射し 草地に投げられたスペクトル (雲はさつきからゆつくり流れてゐる) 日さへまもなくかくされる かくされる前には感応により かくされた後には威神力により まばゆい 白金環 ( はくきんくわん )ができるのだ (ナモサダルマプフンダリカサスートラ) たしかに日はいま羊毛の雲にはひらうとして サガレンの八月のすきとほつた空気を やうやく葡萄の 果汁 ( マスト )のやうに またフレツプスのやうに甘くはつかうさせるのだ そのためにえぞにふの花が一そう明るく見え 松毛虫に食はれて枯れたその大きな山に 桃いろな日光もそそぎ すべて天上技師 Nature 氏の ごく斬新な設計だ 山の 襞 ( ひだ )のひとつのかげは 緑青のゴーシユ四辺形 そのいみじい 玲瓏 ( トランスリユーセント )のなかに からすが飛ぶと見えるのは 一本のごくせいの高いとどまつの 風に削り残された黒い梢だ (ナモサダルマプフンダリカサスートラ) 結晶片岩山地では 燃えあがる雲の銅粉 (向ふが燃えればもえるほど [#「もえるほど」は底本では「もえるほど)」] ここらの樺ややなぎは暗くなる) こんなすてきな瑪瑙の 天蓋 ( キヤノピー ) その下ではぼろぼろの火雲が燃えて 一きれはもう錬金の過程を了へ いまにも結婚しさうにみえる (濁つてしづまる天の青らむ一かけら) いちめんいちめん海蒼のチモシイ めぐるものは神経質の 色丹松 ( ラーチ ) またえぞにふと 桃花心木 ( マホガニー )の柵 こんなに青い白樺の間に 鉋をかけた立派なうちをたてたので これはおれのうちだぞと その顔の赤い愉快な百姓が 井上と少しびつこに大きく壁に書いたのだ 蜂が一ぴき飛んで行く 琥珀細工の春の器械 蒼い眼をしたすがるです (私のとこへあらはれたその蜂は ちやんと抛物線の図式にしたがひ さびしい未知へとんでいつた) チモシイの穂が青くたのしくゆれてゐる それはたのしくゆれてゐるといつたところで 荘厳ミサや 雲環 ( うんくわん )とおなじやうに うれひや悲しみに対立するものではない だから新らしい蜂がまた一疋飛んできて ぼくのまはりをとびめぐり また茨や灌木にひつかかれた わたしのすあしを刺すのです こんなうるんで秋の雲のとぶ日 鈴谷平野の荒さんだ山際の焼け跡に わたくしはこんなにたのしくすわつてゐる ほんたうにそれらの焼けたとゞまつが まつすぐに天に立つて加奈太式に風にゆれ また夢よりもたかくのびた白樺が 青ぞらにわづかの新葉をつけ 三稜玻璃にもまれ (うしろの方はまつ青ですよ クリスマスツリーに使ひたいやうな あをいまつ青いとどまつが いつぱいに生えてゐるのです) いちめんのやなぎらんの群落が 光ともやの紫いろの花をつけ 遠くから近くからけむつてゐる (さはしぎも啼いてゐる たしかさはしぎの発動機だ) こんやはもう標本をいつぱいもつて わたくしは宗谷海峡をわたる だから風の音が汽車のやうだ 流れるものは二条の茶 蛇ではなくて一ぴきの栗鼠 いぶかしさうにこつちをみる (こんどは風が みんなのがやがやしたはなし声にきこえ うしろの遠い山の下からは 好摩の冬の青ぞらから落ちてきたやうな すきとほつた大きなせきばらひがする これはサガレンの古くからの誰かだ) 稚 ( わか )いゑんどうの澱粉や緑金が どこから来てこんなに照らすのか (車室は軋みわたくしはつかれて睡つてゐる) とし子は大きく眼をあいて 烈しい薔薇いろの火に燃されながら (あの七月の高い熱……) 鳥が棲み空気の水のやうな林のことを考へてゐた (かんがへてゐたのか いまかんがへてゐるのか) 車室の軋りは二疋の 栗鼠 ( りす ) ことしは勤めにそとへ出てゐないひとは みんなかはるがはる林へ行かう 赤銅 ( しやくどう )の半月刀を腰にさげて どこかの生意気なアラビヤ酋長が言ふ 七月末のそのころに 思ひ余つたやうにとし子が言つた おらあど死んでもいゝはんて あの林の中さ行ぐだい うごいで熱は高ぐなつても あの林の中でだらほんとに死んでもいいはんて 鳥のやうに栗鼠のやうに そんなにさはやかな林を恋ひ (栗鼠の軋りは水車の夜明け 大きなくるみの木のしただ) 一千九百二十三年の とし子はやさしく眼をみひらいて 透明薔薇の身熱から 青い林をかんがへてゐる フアゴツトの声が前方にし Funeral march があやしくいままたはじまり出す (車室の軋りはかなしみの二疋の栗鼠) 栗鼠お魚たべあんすのすか (二等室のガラスは霜のもやう) もう明けがたに遠くない 崖の木や草も明らかに見え 車室の軋りもいつかかすれ 一ぴきのちひさなちひさな白い蛾が 天井のあかしのあたりを這つてゐる (車室の軋りは天の楽音) 噴火湾のこの黎明の水明り 室蘭通ひの汽船には 二つの赤い灯がともり 東の天末は濁つた孔雀石の縞 黒く立つものは樺の木と楊の木 駒ヶ岳駒ヶ岳 暗い金属の雲をかぶつて立つてゐる そのまつくらな雲のなかに とし子がかくされてゐるかもしれない ああ何べん理智が教へても 私のさびしさはなほらない わたくしの感じないちがつた空間に いままでここにあつた現象がうつる それはあんまりさびしいことだ (そのさびしいものを死といふのだ) たとへそのちがつたきらびやかな空間で とし子がしづかにわらはうと わたくしのかなしみにいぢけた感情は どうしてもどこかにかくされたとし子をおもふ 油紙を着てぬれた馬に乗り つめたい風景のなか 暗い森のかげや ゆるやかな 環状削剥 ( くわんじやうせうはく )の丘 赤い萱の穂のあひだを ゆつくりあるくといふこともいゝし 黒い多面角の 洋傘 ( かうもりがさ )をひろげ 砂砂 ( すなさ )糖を買ひに町へ出ることも ごく新鮮な企画である (ちらけろちらけろ 四十雀) 粗剛なオリザサチバといふ植物の人工群落が タアナアさへもほしがりさうな 上等のさらどの色になつてゐることは 慈雲尊者 ( じうんそんじや )にしたがへば 不貪慾戒 ( ふとんよくかい )のすがたです (ちらけろちらけろ 四十雀 ( しじふから ) そのときの高等遊民は いましつかりした執政官だ) ことことと寂しさを噴く暗い山に 防火線のひらめく灰いろなども 慈雲尊者にしたがへば 不貪慾戒のすがたです 雲は羊毛とちぢれ 黒緑 赤楊 ( はん )のモザイツク またなかぞらには氷片の雲がうかび すすきはきらつと光つて過ぎる 北ぞらのちぢれ羊から おれの崇敬は照り返され 天の海と窓の日おほひ おれの崇敬は照り返され 沼はきれいに鉋をかけられ 朧ろな秋の水ゾルと つめたくぬるぬるした 蓴 ( じゆん )菜とから組成され ゆふべ一晩の雨でできた 陶庵だか東庵だかの蒔絵の 精製された水銀の川です アマルガムにさへならなかつたら 銀の水車でもまはしていい 無細工な銀の水車でもまはしていい (赤紙をはられた火薬車だ あたまの奥ではもうまつ白に爆発してゐる) 無細工の銀の水車でもまはすがいい カフカズ風に帽子を折つてかぶるもの 感官のさびしい盈虚のなかで 貨物車輪の裏の秋の明るさ (ひのきのひらめく六月に おまへが刻んだその線は やがてどんな重荷になつて おまへに男らしい償ひを強ひるかわからない) 手宮文字です 手宮文字です こんなにそらがくもつて来て 山も大へん尖つて青くくらくなり 豆畑だつてほんたうにかなしいのに わづかにその山稜と雲との間には あやしい光の微塵にみちた 幻惑の天がのぞき またそのなかにはかがやきまばゆい積雲の一列が こころも遠くならんでゐる これら葬送行進曲の層雲の底 鳥もわたらない 清澄 ( せいとう )な空間を わたくしはたつたひとり つぎからつぎと冷たいあやしい幻想を抱きながら 一梃のかなづちを持つて 南の方へ石灰岩のいい層を さがしに行かなければなりません がさがさした稲もやさしい 油緑 ( ゆりよく )に熟し 西ならあんな暗い立派な霧でいつぱい 草穂はいちめん風で波立つてゐるのに 可哀さうなおまへの弱いあたまは くらくらするまで青く乱れ いまに太田武か誰かのやうに 眼のふちもぐちやぐちやになつてしまふ ほんたうにそんな偏つて尖つた心の動きかたのくせ なぜこんなにすきとほつてきれいな気層のなかから 燃えて暗いなやましいものをつかまへるか 信仰でしか得られないものを なぜ人間の中でしつかり捕へようとするか 風はどうどう空で鳴つてるし 東京の避難者たちは半分脳膜炎になつて いまでもまいにち遁げて来るのに どうしておまへはそんな医される筈のないかなしみを わざとあかるいそらからとるか いまはもうさうしてゐるときでない けれども悪いとかいゝとか云ふのではない あんまりおまへがひどからうとおもふので みかねてわたしはいつてゐるのだ さあなみだをふいてきちんとたて もうそんな宗教風の恋をしてはいけない そこはちやうど両方の空間が二重になつてゐるとこで おれたちのやうな初心のものに 居られる場処では決してない 爽かなくだもののにほひに充ち つめたくされた銀製の 薄明穹 ( はくめいきゆう )を 雲がどんどんかけてゐる 黒曜 ( こくえう )ひのきやサイプレスの中を 一疋の馬がゆつくりやつてくる ひとりの農夫が乗つてゐる もちろん農夫はからだ半分ぐらゐ 木 ( こ )だちやそこらの銀のアトムに溶け またじぶんでも溶けてもいいとおもひながら あたまの大きな曖昧な馬といつしよにゆつくりくる 首を垂れておとなしくがさがさした南部馬 黒く巨きな松倉山のこつちに 一点のダアリア複合体 その電燈の 企画 ( プラン )なら じつに九月の宝石である その電燈の献策者に わたくしは青い 蕃茄 ( トマト )を贈る どんなにこれらのぬれたみちや クレオソートを塗つたばかりのらんかんや 電線も二本にせものの 虚無 ( きよむ )のなかから光つてゐるし 風景が深く透明にされたかわからない 下では水がごうごう流れて行き 薄明穹の爽かな銀と苹果とを 黒白鳥のむな毛の塊が奔り ああ お月さまが出てゐます ほんたうに鋭い秋の粉や 玻璃末 ( はりまつ )の雲の稜に磨かれて 紫磨銀彩 ( しまぎんさい )に尖つて光る六日の月 橋のらんかんには雨粒がまだいつぱいついてゐる なんといふこのなつかしさの湧きあがり 水はおとなしい膠朧体だし わたくしはこんな 過透明 ( くわとうめい )な景色のなかに 松倉山や 五間森 ( ごけんもり )荒つぽい 石英安山岩 ( デサイト )の岩頸から 放たれた剽悍な刺客に 暗殺されてもいいのです (たしかにわたくしがその木をきつたのだから) (杉のいただきは黒くそらの椀を刺し) 風が口笛をはんぶんちぎつて持つてくれば (気の毒な二重感覚の機関) わたくしは古い印度の青草をみる 崖にぶつつかるそのへんの水は 葱のやうに横に 外 ( そ )れてゐる そんなに風はうまく吹き 半月の表面はきれいに吹きはらはれた だからわたくしの洋傘は しばらくぱたぱた言つてから ぬれた橋板に倒れたのだ 松倉山松倉山尖つてまつ暗な悪魔蒼鉛の空に立ち 電燈はよほど熟してゐる 風がもうこれつきり吹けば まさしく吹いて来る 劫 ( カルパ )のはじめの風 ひときれそらにうかぶ暁のモテイーフ 電線と恐ろしい 玉髄 ( キヤルセドニ )の雲のきれ そこから見当のつかない大きな青い星がうかぶ (何べんの恋の償ひだ) そんな恐ろしいがまいろの雲と わたくしの上着はひるがへり (オルゴールをかけろかけろ) 月はいきなり二つになり 盲ひた黒い暈をつくつて光面を過ぎる雲の一群 (しづまれしづまれ五間森 木をきられてもしづまるのだ) 風が偏倚して過ぎたあとでは クレオソートを塗つたばかりの電柱や 逞しくも起伏する 暗黒山稜 ( あんこくさんりよう )や (虚空は古めかしい 月汞 ( げつこう )にみち) 研ぎ澄まされた天河石天盤の半月 すべてこんなに錯綜した雲やそらの景観が すきとほつて巨大な過去になる 五日の月はさらに小さく副生し 意識のやうに移つて行くちぎれた蛋白彩の雲 月の尖端をかすめて過ぎれば そのまん中の厚いところは黒いのです (風と 嘆息 ( たんそく )との 中 ( なか )にあらゆる世界の 因子 ( いんし )がある) きららかにきらびやかにみだれて飛ぶ断雲と 星雲のやうにうごかない天盤附属の氷片の雲 (それはつめたい虹をあげ) いま硅酸の雲の大部が行き過ぎようとするために みちはなんべんもくらくなり (月あかりがこんなにみちにふると まへにはよく硫黄のにほひがのぼつたのだが いまはその小さな硫黄の粒も 風や酸素に溶かされてしまつた) じつに空は底のしれない洗ひがけの虚空で 月は水銀を塗られたでこぼこの噴火口からできてゐる (山もはやしもけふはひじやうに峻儼だ) どんどん雲は月のおもてを研いで飛んでゆく ひるまのはげしくすさまじい雨が 微塵からなにからすつかりとつてしまつたのだ 月の彎曲の内側から 白いあやしい気体が噴かれ そのために却つて一きれの雲がとかされて (杉の列はみんな黒真珠の保護色) そらそら B氏のやつたあの虹の交錯や顫ひと 苹果の未熟なハロウとが あやしく天を覆ひだす 杉の列には山烏がいつぱいに 潜 ( ひそ )み ペガススのあたりに立つてゐた いま雲は一せいに散兵をしき 極めて堅実にすすんで行く おゝ私のうしろの松倉山には 用意された一万の硅化流紋凝灰岩の弾塊があり 川尻断層のときから息を殺してしまつてゐて 私が腕時計を光らし過ぎれば落ちてくる 空気の透明度は水よりも強く 松倉山から生えた木は 敬虔に天に祈つてゐる 辛うじて赤いすすきの穂がゆらぎ (どうしてどうして松倉山の木は ひどくひどく風にあらびてゐるのだ あのごとごといふのがみんなそれだ) 呼吸のやうに月光はまた明るくなり 雲の遷色とダムを超える水の音 わたしの帽子の静寂と風の塊 いまくらくなり電車の単線ばかりまつすぐにのび レールとみちの粘土の可塑性 月はこの変厄のあひだ不思議な黄いろになつてゐる 沈んだ月夜の楊の木の梢に 二つの星が逆さまにかかる ( 昴 ( すばる )がそらでさう云つてゐる) オリオンの幻怪と青い電燈 また農婦のよろこびの たくましくも赤い頬 風は吹く吹く 松は一本立ち 山を下る電車の奔り もし車の外に立つたらはねとばされる 山へ行つて木をきつたものは どうしても帰るときは肩身がせまい (ああもろもろの徳は 善逝 ( スガタ )から来て そしてスガタにいたるのです) 腕を組み暗い貨物電車の壁による少年よ この籠で今朝鶏を持つて行つたのに それが売れてこんどは持つて戻らないのか そのまつ青な夜のそば畑のうつくしさ 電燈に照らされたそばの畑を見たことがありますか 市民諸君よ おおきやうだい これはおまへの感情だな 市民諸君よなんてふざけたものの云ひやうをするな 東京はいま生きるか死ぬかの堺なのだ 見たまへこの電車だつて 軌道から青い火花をあげ もう蝎かドラゴかもわからず 一心に走つてゐるのだ (豆ばたけのその 喪神 ( さうしん )のあざやかさ) どうしてもこの貨物車の壁はあぶない わたくしが壁といつしよにここらあたりで 投げだされて死ぬことはあり得過ぎる 金をもつてゐるひとは金があてにならない からだの丈夫なひとはごろつとやられる あたまのいいものはあたまが弱い あてにするものはみんなあてにならない たゞもろもろの徳ばかりこの巨きな旅の資糧で そしてそれらもろもろの徳性は 善逝 ( スガタ )から来て 善逝 ( スガタ )に至る 青い抱擁衝動や 明るい雨の中のみたされない唇が きれいにそらに溶けてゆく 日本の九月の気圏です そらは霜の織物をつくり 萱 ( かや )の穂の 満潮 ( まんてう ) ( 三角山 ( さんかくやま )はひかりにかすれ) あやしいそらのバリカンは 白い雲からおりて来て 早くも七つ森第一 梯形 ( ていけい )の 松と 雑木 ( ざふぎ )を 刈 ( か )りおとし 野原がうめばちさうや山羊の乳や 沃度の匂で荒れて大へんかなしいとき 汽車の進行ははやくなり ぬれた赤い崖や何かといつしよに 七つ森第二梯形の 新鮮な 地被 ( ちひ )が刈り払はれ 手帳のやうに青い 卓状台地 ( テーブルランド )は まひるの夢をくすぼらし ラテライトのひどい崖から 梯形第三のすさまじい羊歯や こならやさるとりいばらが滑り (おお第一の紺青の寂寥) 縮れて雲はぎらぎら光り とんぼは萱の花のやうに飛んでゐる (萱の穂は満潮 萱の穂は満潮) 一本さびしく赤く燃える栗の木から 七つ森の第四 伯林青 ( べるりんせい )スロープは やまなしの匂の雲に起伏し すこし日射しのくらむひまに そらのバリカンがそれを刈る (腐植土のみちと天の石墨) 夜風太郎の配下と子孫とは 大きな帽子を風にうねらせ 落葉松のせはしい足なみを しきりに馬を急がせるうちに 早くも第六梯形の暗いリパライトは ハツクニーのやうに刈られてしまひ ななめに琥珀の 陽 ( ひ )も射して たうとうぼくは一つ勘定をまちがへた 第四か第五かをうまくそらからごまかされた どうして決して そんなことはない いまきらめきだすその真鍮の畑の一片から 明暗交錯のむかふにひそむものは まさしく第七梯形の 雲に浮んだその最後のものだ 緑青を吐く松のむさくるしさと ちぢれて悼む 雲の羊毛 ( 三角 ( さんかく )やまはひかりにかすれ) 萱の穂は赤くならび 雲はカシユガル産の苹果の果肉よりもつめたい 鳥は一ぺんに飛びあがつて ラツグの音譜をばら撒きだ 古枕木を灼いてこさへた 黒い保線小屋の秋の中では 四面体 聚形 ( しゆうけい )の一人の工夫が 米国風のブリキの缶で たしかメリケン粉を 捏 ( こ )ねてゐる 鳥はまた一つまみ 空からばら撒かれ 一ぺんつめたい雲の下で展開し こんどは巧に引力の法則をつかつて 遠いギリヤークの電線にあつまる 赤い碍子のうへにゐる そのきのどくなすゞめども 口笛を吹きまた新らしい濃い空気を吸へば たれでもみんなきのどくになる 森はどれも群青に泣いてゐるし 松林なら地被もところどころ剥げて 酸性土壌ももう十月になつたのだ 私の着物もすつかり thread-bare その陰影のなかから 逞ましい向ふの土方がくしやみをする 氷河が海にはひるやうに 白い雲のたくさんの流れは 枯れた野原に注いでゐる だからわたくしのふだん決して見ない 小さな三角の前山なども はつきり白く浮いてでる 栗の梢のモザイツクと 鉄葉細工 ( ぶりきざいく )のやなぎの葉 水のそばでは堅い黄いろなまるめろが 枝も裂けるまで実つてゐる (こんどばら撒いてしまつたら…… ふん ちやうど四十雀のやうに) 雲が縮れてぎらぎら光るとき 大きな帽子をかぶつて 野原をおほびらにあるけたら おれはそのほかにもうなんにもいらない 火薬も燐も大きな紙幣もほしくない 截られた根から青じろい樹液がにじみ あたらしい腐植のにほひを嗅ぎながら きらびやかな雨あがりの中にはたらけば わたくしは移住の 清教徒 ( ピユリタン )です 雲はぐらぐらゆれて馳けるし 梨の葉にはいちいち精巧な葉脈があつて 短果枝には雫がレンズになり そらや木やすべての景象ををさめてゐる わたくしがここを環に掘つてしまふあひだ その雫が落ちないことをねがふ なぜならいまこのちひさなアカシヤをとつたあとで わたくしは 鄭重 ( ていちよう )にかがんでそれに唇をあてる えりをりのシヤツやぼろぼろの上着をきて 企らむやうに肩をはりながら そつちをぬすみみてゐれば ひじやうな 悪漢 ( わるもの )にもみえようが わたくしはゆるされるとおもふ なにもかもみんなたよりなく なにもかもみんなあてにならない これらげんしやうのせかいのなかで そのたよりない 性 ( せい )質が こんなきれいな露になつたり いぢけたちひさなまゆみの木を 紅 ( べに )からやさしい月光いろまで 豪奢な織物に染めたりする そんならもうアカシヤの木もほりとられたし いまはまんぞくしてたうぐはをおき わたくしは待つてゐたこひびとにあふやうに 鷹揚 ( おうやう )にわらつてその木のしたへゆくのだけれども それはひとつの 情炎 ( じやうえん )だ もう水いろの過去になつてゐる 松がいきなり明るくなつて のはらがぱつとひらければ かぎりなくかぎりなくかれくさは日に燃え 電信ばしらはやさしく白い碍子をつらね ベーリング市までつづくとおもはれる すみわたる 海蒼 ( かいさう )の天と きよめられるひとのねがひ からまつはふたたびわかやいで萌え 幻聴の透明なひばり 七時雨 ( ななしぐれ )の青い起伏は また心象のなかにも起伏し ひとむらのやなぎ木立は ボルガのきしのそのやなぎ 天椀 ( てんわん )の孔雀石にひそまり 薬師岱赭 ( やくしたいしや )のきびしくするどいもりあがり 火口の雪は皺ごと刻み くらかけのびんかんな 稜 ( かど )は 青ぞらに星雲をあげる (おい かしは てめいのあだなを やまのたばこの木つていふつてのはほんたうか) こんなあかるい 穹窿 ( きゆうりゆう )と草を はんにちゆつくりあるくことは いつたいなんといふおんけいだらう わたくしはそれをはりつけとでもとりかへる こひびととひとめみることでさへさうでないか (おい やまのたばこの木 あんまりへんなをどりをやると 未来派だつていはれるぜ) わたくしは森やのはらのこひびと 蘆 ( よし )のあひだをがさがさ行けば つつましく折られたみどりいろの通信は いつかぽけつとにはひつてゐるし はやしのくらいとこをあるいてゐると 三日月 ( みかづき )がたのくちびるのあとで 肱やずぼんがいつぱいになる 喪神のしろいかがみが 薬師火口のいただきにかかり 日かげになつた火山 礫堆 ( れきたい )の中腹から 畏るべくかなしむべき 砕塊熔岩 ( ブロツクレーバ )の黒 わたくしはさつきの柏や松の野原をよぎるときから なにかあかるい曠原風の情調を ばらばらにするやうなひどいけしきが 展かれるとはおもつてゐた けれどもここは空気も深い淵になつてゐて ごく強力な鬼神たちの棲みかだ 一ぴきの鳥さへも見えない わたくしがあぶなくその一一の 岩塊 ( ブロツク )をふみ すこしの小高いところにのぼり さらにつくづくとこの焼石のひろがりをみわたせば 雪を越えてきたつめたい風はみねから吹き 雲はあらはれてつぎからつぎと消え いちいちの 火山塊 ( ブロツク )の黒いかげ 貞享四年のちひさな噴火から およそ二百三十五年のあひだに 空気のなかの酸素や炭酸瓦斯 これら清洌な 試薬 ( しやく )によつて どれくらゐの 風化 ( ふうくわ )が行はれ どんな植物が生えたかを 見ようとして 私 ( わたし )の来たのに対し それは恐ろしい二種の苔で答へた その白つぽい厚いすぎごけの 表面がかさかさに乾いてゐるので わたくしはまた麺麭ともかんがへ ちやうどひるの食事をもたないとこから ひじやうな 饗応 ( きやうおう )ともかんずるのだが (なぜならたべものといふものは それをみてよろこぶもので それからあとはたべるものだから) ここらでそんなかんがへは あんまり僭越かもしれない とにかくわたくしは荷物をおろし 灰いろの苔に靴やからだを埋め 一つの赤い 苹果 ( りんご )をたべる うるうるしながら苹果に噛みつけば 雪を越えてきたつめたい風はみねから吹き 野はらの白樺の葉は 紅 ( べに )や 金 ( キン )やせはしくゆすれ 北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる (あれがぼくのしやつだ 青いリンネルの農民シヤツだ) そらにはちりのやうに小鳥がとび かげろふや青いギリシヤ文字は せはしく野はらの雪に燃えます パツセン大街道のひのきからは 凍つたしづくが 燦々 ( さんさん )と降り 銀河ステーシヨンの遠方シグナルも けさはまつ 赤 ( か )に澱んでゐます 川はどんどん 氷 ( ザエ )を流してゐるのに みんなは 生 ( なま )ゴムの長靴をはき 狐や犬の毛皮を着て 陶器の露店をひやかしたり ぶらさがつた 章魚 ( たこ )を品さだめしたりする あのにぎやかな土沢の冬の 市日 ( いちび )です (はんの木とまばゆい雲のアルコホル あすこにやどりぎの黄金のゴールが さめざめとしてひかつてもいい) あゝ Josef Pasternack の指揮する この冬の銀河軽便鉄道は 幾重のあえかな氷をくぐり (でんしんばしらの赤い碍子と松の森) にせものの金のメタルをぶらさげて 茶いろの瞳をりんと張り つめたく青らむ天椀の下 うららかな雪の台地を急ぐもの (窓のガラスの氷の羊歯は だんだん白い湯気にかはる) パツセン大街道のひのきから しづくは燃えていちめんに降り はねあがる青い枝や 紅玉やトパースまたいろいろのスペクトルや もうまるで市場のやうな盛んな取引です.。 。

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